ビートルズの映画「レット・イット・ビー」がリマスターされたのでDisney+に再入会して、そのついでにユナちゃんがどうしても観たくて「ビッグマウス」を鑑賞しました。
ユナちゃんがニコニコ微笑んだり恋愛したりするのではない、別の姿が観たかったのでその点では大満足!少女時代全盛期の動画を見ると彼女は凄く痩せていて、とても子供っぽい感じに僕の目には映っていたんですが、30代になってからの姿をドラマで見ると、大人っぽくてとてもエレガントですねー!
少女時代は、8人全員がものすごくキャラ立ちしているので、ユナちゃんはあの中にいても「ひときわ目立つ」という存在ではないように思っていたんですが、女優としての姿はほんとうに「他を圧倒する美しさ」が際立っていると思います。とくに、本作「ビッグマウス」のようなノワールの作品の中で、強い意志と行動力を貫く、という立ち位置は、彼女のキリッとした目つきにとても似合っていました。
で、そこは満足したんですけど、作品はと言うと・・・あれ??笑
途中までかなり面白いのに、後半、なにがしたかった??
【以下、完全ネタバレです!ご注意】
まあ、途中までかなり面白いとはいえ、ツッコミどころはいろいろあるわけです。観た人は解ると思いますが、まず主人公のパク・チャンホ、弁護士としてそれほど実力もやる気もない感じに描かれていたのが、刑務所に入ってからは一変!キレキレの頭脳にリスクを厭わない行動力、しかも喧嘩も暴力団組長を一発で気絶させるとか・・・笑
いくら設定とはいえ、とても同一人物とは思えない・・・笑
でも、前半は「ビッグマウスは誰だ?」という大きな謎と、さらにパク・チャンホの「絶体絶命」劇がかなり面白いんですよね。刑務所内という密室効果もあって、なかなかスリリングなんです。(でも簡単にパク・チャンホが刑務所内をすぐに掌握しすぎでしょ、とは思います笑)
ビッグマウスの正体についてはいろいろと匂わせがあるので、まあ誰もが怪しく見えるように作られてますし、もしかしたら刑務所の中にはいないのかもしれないとか、あるいは「ビッグマウスは複数人の共同体なのでは?」とか想像をかきたてられました。
だから、ビッグマウスの正体が分かる前の11話までは、「けっこう夢中になって次の話を観たくなる」という展開だったんですよね。ところが・・・あれ???笑
ビッグマウスの正体が分かってからいきなり大失速・・・
失速① ビッグマウスの正体
まず、あれほど引っ張ったビッグマウスの正体が、ノ・バクという、最も意外性のない人物だったこと。「うわーーこの人か!!!!」感がほとんどない笑 まあそうですよね、所長と2人きりで碁打ってたし、占いする人だからタロットカード使っても不思議ないし。
むしろ、「この人だったらあまりにありきたりで嫌だな」と思ってた何人かのうちの一人でした。
失速② ビッグマウス簡単に死にすぎ
ドラマはこの段階まで、「謎に包まれたビッグマウスの、完全さと神秘性」に大きく依存した作りだったわけです。にもかかわらず、脚本家は保釈されたビッグマウスをすぐに殺してしまいました笑
まず、そもそもビッグマウス側に、チャンホの提案を飲むメリットはほとんどないと思えたのに、なぜあそこで提案を飲んだのかがまったく説明不足だったかな・・・。
しかも、ビッグマウスは「実に用意周到で完全にいろいろなことを見通していて、あらゆることに先んじて手を打つ存在」として描かれていたのに、あんな簡単に死んでしまっては、全然世界観が合わないわけですよ・・・だって、ビッグマウスだとバレて保釈されたら今までの敵が黙っていないことぐらい誰でも分かる話なのに、まるで丸腰のままなんの警戒もなく外にでていって殺されるという・・・
ちょっとこのあたりは雑だったかなー。
最大の矛盾は、ビッグマウスの組織のNo.2!あの人はダメじゃない?
失速③ No.2の正体があの人では、話が矛盾だらけになる
ビッグマウスの遺言動画について「私が録画しました」と入ってきたのが、チャンホの事務所のパートナーであるスンテ。
一瞬、「おわーー!No.2おまえか!!!」ってなったんですが、いやいやちょっと待って笑
冷静に考えてみましょう。
そもそもビッグマウスはチャンホに「お前を身代わりにした当初、チェ・ドハの動きはまったく無関係だった」って言ってるんです。つまりチャンホを身代わりにした本来の目的は、「身代わりの人物をビッグマウスに仕立て上げてそいつに受刑させ、本物の俺は微罪だからすぐ出てくよ」という、本当に単なる「身代わり」でしかないわけです。
では、パク・チャンホを身代わりにするにあたって、No.2のスンテはそれを計画の段階で知らされていなかったのか?
いや、それは設定的に少々無理があるのではないでしょうか。 獄中のビッグマウスが現実的にできることは「指令を出す」ことだけなので、実行部隊は必ず外にいるはずです。そうなると、パク・チャンホの事務所に「大量の札束とか麻薬とか仕込んで身代わりに仕立てあげる」という一連の作業に関しても、スンテ氏がまったく預かり知らなかったのなら、彼のNo.2のポジションは完全にただのお飾りになってしまいます。
つまり、スンテ氏、パク・チャンホが身代わりになって収監された時点で、チャンホやミホのことを完全に裏切ってる・・・としか、設定上は想像できないわけです。それが、あとになって「友達の命を救った」ってセリフを聞かされても、どこか辻褄が合わないんですよね。 むしろ友達をいったん破滅に追い込んだではないですか? それが言い過ぎなら、少なくともチャンホが破滅していくのをただ黙って見ていたではないですか。チャンホが刑務所内でのし上がっていく想定なんかしてなかった、とビッグマウスも言ってますし。
だからここで、ドラマが大きく壊れてるんですよね・・・
もし仮に、スンテがいつもチャンホの味方だったのなら、例えばスンテがビッグマウスに「チャンホはだけはやめてくれ」と詰め寄るとか、「彼は僕のパートナーですからダメです」って言うとかして、それでもビッグマウスに押し切られる・・・とか、そういったシーンが絶対に必要じゃないですか。
逆に、身代わりに仕立て上げられるのがチャンホであることをNo.2の彼が一切知らなかったのだとしたら、あのオールマイティな組織のNo.2にしてはボンクラすぎる・・笑
ちょっとこのNo.2は、いろいろ矛盾がありすぎたかなー・・・
だから、後半、組織のNo.2としてシレッとチャンホを支えていく姿が、どうも設定的におかしいので、すごい違和感がありました。
ミホに33本の白い菊を送ったのはいったい誰なんですか? スンテ君、あなたじゃないの?? 違うの? じゃあ誰? そもそもスンテ氏、それを知らなかったんですか?
後半、ここまで矛盾だらけになるドラマも珍しい
失速④ なんか選挙のドラマになっとる・・・
まず、「市長になれば相手を倒す法と正義を行使できる」と言って市長に立候補するわけですが、それって意味不明ですよね笑 逆に「市長にならないとそれできないのか?」と思ってしまいました。「相手を倒す法と正義」は、弁護士のままでいいんじゃないでしょうか? なぜいたずらに権力を求めるのか? 市長にならないとアクセスできない情報に、相手の不正の根拠が隠されてるとか?・・・そのへんの「なぜ市長に?」に関して納得いく説明が一切ない状態で物語は選挙ドラマと化し、ビラを配ったり街宣したり、スタッフみんなで「あと2日頑張ろう!」とか、・・・なんというか、ドラマ序盤から中盤の緊迫感はいったいどこに行ってしまったのかと思うほどでした。
しかも選挙に負けるしね。・・・あれ?負けるの? でもまだ、チェ・ドハを追い詰める切り札、出てくるんですよね? ・・・と、多くの人が思ったのではないでしょうか? ここまでは展開的に、完全に「法と正義で悪を裁く」という流れできてましたから、まあ普通はそういう展開を無意識のうちに期待するのではないかと思います。
失速⑤ ミホちゃん死んじゃダメじゃない?
ミホちゃんについて。
彼女は、正義と真実と愛のために意思を貫き通して、抜群の直感と行動力でチャンホをサポートする姿がとても良かったですよね。でも、「なにか怪しいトンネルの中で爆発か崩落かわからない事故が起こってるにもかかわらず、そのままトンネルの中にグイグイと入っていっちゃう」のは、いくらなんても無鉄砲すぎですよね? そんな思慮のないことをするキャラには描かれてなかったと思うんです。それまでは、「思い立ったらすぐ行動」という気持ちの強いシーンこそ多く描かれていましたが、思慮の浅いタイプでは決してなかったはず。ここでちょっとミホちゃんのキャラが崩壊した感、無理な行動に走らせすぎな感がありました。みんな、「行っちゃダメだよ〜・・」って画面に向かって言いませんでしたか? 僕は言っちゃいましたよ笑
結局、そこで汚染水を浴びてしまったがために最後死んでしまうわけですが、NK化学の不正を暴く方法としてはほかにいくらでも考えられるのではないでしょうか(脚本として、って意味で)
結局、ミホちゃん死んじゃったことによって「いちばん正義感に燃えて、いい人で、歯を食いしばって頑張ってた人が何も報われず、無駄に死んでしまう」ということになってしまったわけです。これ、ドラマのメッセージとしては、「努力は報われません」というメッセージなので、ちょっとつらかったなー。これじゃ救いがなさすぎる・・・チャンホもやたら淡々とミホの死を受け入れてるし。
失速⑥ 結局チェ・ドハ殺す笑
あれほど「法と正義で不正を暴いて絶望させてやる」と繰り返し繰り返し言っていたにもかかわらず、結局最後は殺すという・・・(泣)
弁護士なんだからダメでしょ?笑
しかも殺し方が「NK化学の出した汚染水をプールに満たす」という、ものすごく現実離れしてる方法なんですよね。現職の市長が血を吐いて死んだら、そのあと絶対様々な捜査がされるに決まってますし、プールに汚染水が入っていたのもすぐに警察・検察にバレるし、じゃあそれやったの誰?ってなったときすぐにバレるに決まってます。
なのにチャンホ氏、数多くの部下たち(というより手下たち)が列を作って深々とお辞儀をしてる中を、ポケットに手を突っ込んで悠然と立ち去っていくという・・・
あのラストの姿は、単に「暴力組織の親分」にしか見えなかったです。
失速⑦ つまりミホの「優しくて正義のビッグマウスになってほしい」が叶わない
チャンホ氏、結局は「弁護士としてチェ・ドハを追い詰めていく」という道を選ばずに、「暴力組織のトップとして殺す」という選択をするわけです。しかもラストは上に書いたように、「お辞儀する手下の中を悠然と立ち去る」わけですから、あれは「暴力組織のトップとして君臨する人生を踏み出す」ということを描いているようにも見えるわけです。殺しちゃった時点で「優しくて正義のビッグマウス」じゃないし(泣)
結局、このドラマを一言で言うと、「三流弁護士だった男が、暴力組織のトップとしてのし上がっていく」というストーリーに見えてしまうわけです。
まあだから、制作陣は本当にノワールをやりたかったんだな、って思うわけですけど、このドラマを観ている我々としては、「法と正義で完膚なきまでにチェ・ドハを打ちのめしていく」という展開を望んだ人が多いのではないでしょうか。なぜなら、選挙で負けるまでは、物語として間違いなくそういう流れだったからです。
つまり、11話までに丹念に描かれてきた世界観や価値観が、12話以降まったく違う話になっちゃったなー、って感じが非常に強かったです。そこが、本作が「なんか残念」と言われる大きな原因だと思います。
結局、ミホが死んだこととの対比では、「真実と愛と正義は死に、暴力が残った」という構図となるわけですから、まあむなしくもなりますよね。想像以上にかなりのバッドエンドだったかな、と思います。
失速⑧ そういえばソ教授の論文どうなった?
あれほど、ドラマの中心的な推進力となっていた「ソ教授の論文」、そういえばどうなったんでしたっけ?何が書かれてたんでしたっけ?笑 なぜ全員が血眼になって探していたのか、結局解らずじまい。
あと、DV夫と揉み合って結局殺されたヘジン氏、「行方不明」のまま終わりで、これもなんというか投げっぱなし。あの部屋に捜査が入れば、必ず犯罪の痕跡が残っていると思うんですが、どう始末したかも我々は知らないわけです。
あと、カン会長が強力に推し進めたNF9って結局なんだったの?
とかとか、「あれ?あの件どーなった?」っていうのがいっぱい残ってます。
まあ別に伏線を回収すればいいってものではないですが、さすがにあらゆるものを投げっぱなしってのもなー・・
最後に、ユナちゃんのインタビューが面白い
ユナちゃんが本作品のインタビューに答えた記事があるので、リンク貼っておきます。「ミホが死んだことについてどう思いますか」という問いに、慎重に言葉を選びながら、そのまま答えることを避けて、「脚本家の先生にお考えがあるのだと思います」というような受け答えをしています。
下の記事でご覧いただけます。
と、まあこれだけ矛盾点がありながら、結論としてはまあまあ面白かったので、そこは俳優さんたちの演技が本当に素晴らしかった、っていうことが言えるんじゃないかと思ってます。
正直、イ・ジョンソクさんのファンとユナちゃんのファンは満足したんじゃないかな?笑
僕はユナ大好きなので、けっこう満足しました笑
とくに、本作によって演技者としての幅がかなり広がったんじゃないかと思えますし、今後いろんなオファーが来るでしょうから、これからのご活躍がますます楽しみとなりました。
★ドラマの得点 9点★(ドクター・プリズナーを10点としたときの評価です)
※ドラマとしては8点ですがユナポイント1点プラスしました笑
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